樹「え、蘭兄ちゃん来てないの?」
トナミ「みたい。今貴文が携帯に電話してんだけどさ、出ないってさ」
樹「え、え? それって大丈夫なの。もしかして事故にあったとかじゃ」
悠太「ただの寝坊じゃないのー? 結構寝汚いしあの人」
樹「またそんな事言う! なんでそんなに蘭兄ちゃんに突っ掛かるの悠太くん。蘭兄ちゃんが可哀想だよ!」
悠太「別に突っ掛かってないし。俺は本当の事言ってるだけじゃん」
樹「それが突っ掛かってるって言うんでしょ?」
悠太「なんだよ樹、俺に喧嘩売ってんの?」
樹「そうじゃなくて……」
シーナ(首を左右に振って)
「樹」
樹「シーナ。だけど」
トナミ「いい加減にするのはどっちだか」
樹「トナミ?」
トナミ「威圧して黙らせて独裁国家築くのは別に勝手にしろって感じだけど、ちょーっと調子に乗りすぎだぞ悠太」
悠太「なにがだよ」
トナミ「リーダーと喧嘩すんのは勝手だけどさ、樹にまで火の粉飛ばすんなら俺も黙ってないかんね」
樹「ちょっ、トナミまで何言い出すの!?」
トナミ「リーダーを小バカにしてさ、からかうなんて俺もするけどやっぱ程度ってあると思うんだよねー。オーディション惨敗するってこないだ言ってたけどじゃあお前はどうなのさ?」
悠太「俺は今さらオーディションなんてそんな初心者のするような事しなくたって仕事くるし」
トナミ「親の力でだろ」
悠太「……は?」
トナミ「ガキみたいにリーダーに突っ掛かるのもこないだ図星突かれたからだろ。だから怒ったんじゃん」
悠太「ちげーよ。何いっちゃってんの。バカじゃね?」
トナミ「じゃあなんで怒ってんの? 自分がリーダーより格上だって思ってんならさ、いい加減やめればこんな事。くっだらない」
樹「ト、トナミっ……」
悠太(トナミを睨みあげて)
「ゆーじゃんか」
トナミ「そりゃあ大概俺も腹たつっての。お前が最初ゆったんじゃん。自分はもう親のお飾りでいるのは嫌だって。だから貴仁のおっちゃんについてくんだって。自分の自由に活動したいんだってさ。それに俺もシーナも賛同したからお前についてきたのに。なのに、これ? これがお前がやりたかった事? だったら全然変わってないじゃん。前の事務所にいた時から全っ然成長してないじゃん。自分が一番じゃないと嫌ならさ、親の所に帰れよ!」
(間をあけ、ふいに現れる貴文)
貴文「ダメだぁ、やっぱ出ねぇ。〈空気が重いのに気付き〉って、あ? ど、どした?」
トナミ(苛立たしげに)
「なんでもない」
SE(ソファに座る)
樹(心配げに)
「蘭兄ちゃん出ないの?」
貴文「あぁ、うんともすんとも言わねぇよ。ったくどこほっつき歩いてんだあいつは」
樹「俺、蘭兄ちゃんの家に行ってくるよ。もしかしてなんかあったのかも」
美月「ダメです」
貴文「美月」
樹「美月さん」
美月「今日は新しいお仕事の説明をすると申し上げた筈ですよ。来ないなら後日また話せばいいだけの事です。いらっしゃれば、ですが」
貴文(眉をよせて)
「おいおい、めったな事言うなよ」
美月「とりあえず時間が惜しいです。午後からは四人ともそれぞれ撮影が入ってますからね。ミーティングを始めましょう」
樹「え、でも……」
貴文「座りな樹」
樹「貴文さん!?」
貴文「とりあえず、だ。撮影に遅れるわけにはいかないだろ?」
樹「そう、だけど」
シーナ「樹、座る」
樹「シーナまでぇ〜」
シーナ「ミーティング終わったら、電話すればいい」
樹「……うん、わかった」
SE(携帯着信)
鈴音「さっきっからよぉなる携帯やなぁ。大概出はったらどないや」
蘭「んー……あとで。コーヒーおかわり鈴音さん」
鈴音「はいはい」
伯(遠目でこそりと)
「どうなさったんでしょう、元気がありませんねぇ」
鈴音「まぁ今日はお目当ての綺羅がいはらへんからちゃうか。ほっとき」
伯「はい……」
SE(主題歌)
前編終了