トナミ「え〜っ、仮装してケーキの販売!?」
美月「ええ。高橋製菓店さんからのご依頼です。ギャラもそれなりに頂ける様で受けさせて頂きました」
樹(おずおずと挙手しながら)
「あの、それってただケーキ売るだけなの?」
美月「と申しますと?」
樹「美月さんの事だから一緒にCDも売っちゃえ的な企画かなぁと思って」
貴文「おー流石樹、鋭いとこつくじゃないか」
トナミ「え、そうなの?」
貴文「おお、高橋製菓店さんが今回のクリスマスに年齢層のターゲットを子供だけに絞った商品を出すんだと。それに対してイメージキャラクターもそれに見あった年齢のタレントを使いたいんだってよ」
美月「高橋製菓店はトナミくんがよく利用するお店ではありませんか?」
トナミ「え? あ、うん。鈴あんちゃんが高橋のおっちゃんと仲がいいから。高橋のおっちゃんは鈴あんちゃんのお菓子作りの先生なんだ」
美月「貴方がいつも店のお菓子を美味しく食べてくれるから、是非にとご依頼して下さったんですよ。貴方ならうちの味を知ってるだろうからだと」
トナミ「うーわそれって何かプレッシャー感じる」
貴文「いいじゃねーか。誰でもないお前とSAGINに来た依頼だ。頑張ってもらうぜ」
美月「それに合わせ新曲も製作します。曲はもう出来ていて後はミナトくんの作詞待ちなのでまぁ三日くらいでお渡し出来るかと思いますよ。当日はケーキの販売時にその新曲をBGMとして使わせて頂ける様に御許可を頂けましたから、少し強行スケジュールになるかも知れませんが頑張って下さいね」
シーナ「服なに?」
悠太「仮装してってなんの? サンタとかトナカイとか?」
SE(紙の音)
貴文(企画書を見ながら)
「えーっと、あぁそれぞれ全部だな。〈メンバーを指差しながら〉樹と蘭がサンタ、シーナはケーキの帽子、トナミと悠太はトナカイの着ぐるみ」
悠・ト「着ぐるみ〜!?」
悠太「ちょっ、なにその扱いの違い!?」
トナミ「そうだよ着ぐるみって……俺絶対ヤダかんね!?」
美月「いいではありませんか。きっとお似合いですよお二人には」
悠太「二人にはって言った今? にはって言った!?」
貴文(からかう)
「いいじゃねーか。SAGINのお笑い担当。ファイト!」
悠・ト「誰がお笑い担当だっ!」
シーナ(浮かない顔の樹に気付き)
「樹、どうした?」
樹「え?」
シーナ「変な顔。サンタクロース嫌?」
樹「ううん、そうじゃなくて……蘭兄ちゃんはどうするんだろうって。新曲を作ること知ってるのかな?」
シーナ「心配?」
樹「少しだけ」
シーナ(樹の耳に口を寄せて、内緒話)
「行く?」
樹「どこに?」
シーナ「悠太、内緒。リーダー会いに行く俺達」
樹(ぱぁっと笑顔になり)
「うん!」
SE(公園・子供の声)
蘭(タバコの煙を吐き出す)
「あ〜今日もいい天気だねぇ。おてんとさんはぽかぽかだし風もそんな冷たくないし。こんまんま寝ちまいたいぜ」
シーナ(蘭からタバコをとりあげ)
「未成年」
蘭(いきなり現れたシーナに驚き)
「うおっ、なんだなんだどっからわいたんだお前!?」
樹「蘭兄ちゃん!」
蘭(樹にガバリと抱き付かれ)
「うおっ!?」
樹「もぉっ何やってるの兄ちゃん! 事務所にもこないでこんなとこでサボったりして!! 電話にも出ないし、家に行ってもいない学校も行ってないって、心配したんだよ」
蘭「あー……わりぃわりぃ。ちょっと色々忙しくてよ」
樹(きょとんと)
「そうなの?」
蘭(からかい風)
「美人なおねいさん探しに」
樹「そんなの忙しいって言わないでしょ!?」
SE(ポカポカ)
蘭「いてっ、ちょっ、オイ殴んなって。冗談だっつの!」
シーナ「新曲」
蘭「あ?」
シーナ「クリスマスに新曲作る」
蘭「マジで?」
シーナ(こくりと頷く)
「だから、いい加減事務所来る」
蘭「新曲ねぇ。時期的にクリスマス物ってとこか」
樹「そうだよ。それでね、クリスマスにケーキ販売の仕事も入ったんだ。新作ケーキのイメージキャラクターにSAGINが選ばれてね、店前で宣伝を兼ねた販売をするんだって。そのついでにその新曲のCDも売るんだ」
蘭「へぇーマジかよ。美月もやるじゃんそんな仕事見つけて来るなんてよ」
樹「でしょ? だから蘭兄ちゃんもそろそろ事務所に来て準備しなきゃ。新しいダンスも考えなきゃだし」
蘭「あ〜……そう、だな」
樹「ほら、じゃあ事務所行こうよ。美月さんも貴文さんもまだいるから」
蘭「いや、でもさ」
樹「怒られるのが嫌なら俺達も一緒に謝ってあげるよ。ね、シーナ」
シーナ「謝る」
蘭「……じゃなくてよ。実は俺、SAGINやめようと思ってんだ」
樹「……え?」
蘭「SAGINっつーか、この業界自体をさ」
樹「え、え、ちょっと待ってどういうこと蘭兄ちゃん」
蘭「どうもこうもまんまの意味だよ。やっぱよ、無理だったんだって俺が芸能人なんてさ」
樹「何言ってるの? そんな事あるはずないでしょ。だって蘭兄ちゃんは少しずつだけど仕事来るようになったって貴文さん言ってたよ。それを言うなら俺の方が全然で……」
蘭「お前はまだ若いし、何にでもなれんだよ。それに美月がついてんだろ。ここだけの話、あいつ前の事務所では相当やり手のプロデューサーだったんだぜ。今は何でか猫被ってっけどあいつがついたならお前は成功する。俺が保証してやんよ」
樹「じゃ、じゃあ蘭兄ちゃんも美月さんについてもらえばいいんじゃない? そしたらきっと」
蘭「どーだかなぁ。俺らは出会いからして最悪だったからな。多分頼んでもしてくんねーよ」
樹「そんな事ないよ!<自信なさげに>たぶん、だけど……」
蘭(クスリと笑い)
「ま、お前らなら俺がいなくたって大丈夫だって。頑張れよチビッ子」
樹「蘭兄ちゃん……」