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スタッフ入り口

SE(チャイム)
SE(ガチャ)

蘭「へーいどなたで……たか、ふみ?」

貴文「よぉ」

蘭「……へっ、しゃちょー自ら何のご用だ?」

貴文「んなの話しに来たに決まってんだろうが」

蘭「今更何の話をするってんだよ」

貴文「事務所辞めるんだってな」

蘭「樹から聞いたのか?」

貴文「ああ。泣いてたぞあいつ」

蘭「泣いてた? 何でだよ。あいつが泣く理由なんざねぇだろ」

貴文「わかってんだろ、ほんとは。わからないんだったらお前らはただ上部だけの仲間だったっつーことだ。……とりあえずだ、話、しようぜ」

蘭「別に話なんて……」

貴文「話っつってもあれだ」

SE(袋の音)

貴文(ニッと笑んで)
「まぁ酒でも飲みながらしっぽり同級生の語らい、みたいなさ」

蘭(一瞬驚き・悪戯笑み)
「俺ら未成年者じゃなかったっけ?」

貴文「15歳未満がいないからモーマンターイ」

蘭(クックと笑って)
「あがれよ」

貴文「おじゃましまーす」












蘭「んで俺言ったわけよ、お前らに俺の何がわかんだーって。したら送られてきたのは不合格通知。マジでありえないって思ったね。あ、ジャーキーとって」

貴文「ん。まぁそんな奴いくらでもいるって。俺も色んな企業に商談に行くじゃんか。したらさ、やっぱ見た目こんなだから門前払いさせられんだ。そりゃそうだよなー。どこの世に芸能事務所の社長してる高校生がいるってんだよ」

蘭「大人って見た目で人を判断すっからよー、それがダメだってんだよな。髪そめりゃ不良だのピアス空けりゃ人生の落ちぶれ者だの」

貴文「あーねぇ。うちの学校にもいたじゃん、生活指導の畑中。あいっつマジで人を見下してるよな。何度埋めてやろうかって思った事か。あんな奴が何で生活指導やれてんのか意味わかんね。それならよっぽど数学の後藤のが向いてるって」

蘭「あーぐっさんね。確かにあのじいさんには数式教えるより茶でも飲みながら世間話のがあってそう」

貴文「親いなくなってさ、暫くバタバタして学校いけなかったじゃん俺。事務所の事一から覚えないといけないし辞めてく奴らとかの後処理とか。そりゃもう担任の奴キレるキレる。家が大変なんだっつっても信じてくんないしー」

蘭「そりゃあれだ、日頃の行いが悪いんだよお前の」

貴文「はははーだ。……でもぐっさんはさ、信じてくれたんだよな。話も聞いてくれたし、他の奴らの間に入ってくれたりさ。そんで思ったわけ、話を聞いてもらえるだけでこんな安心できるもんなんだーって。
 黙って話を聞いてもらえるだけで問題は解決しなくても不安はなくなるもんなんだなってさ」

蘭「そうだな……」

貴文「だから俺さ、お前らにはそうであろうって思ったんだ。悪態だって冗談だってバンバン言い合って、相談だってしあえる仲になろうって。実際親父とおふくろがいなくなるまで口も聞いたことなかったじゃん俺ら。まぁお前は学校一緒だし顔は合わせてたけどただのクラスメートって感じだったし。〈ニッと笑って〉まっ、お前らにはただウゼェだけかもだけどな」

蘭「かもな」

貴文〈ガクリと〉
「オイ、そこでそんなこというかよお前」

蘭〈笑って〉
「冗談だって。……わかってるって。お前は頑張ってる、十分な。ありがてぇぐらいさ。だから尚更」

貴文「あ?」

蘭「尚更、俺がいるわけにはいかないんだよ」

貴文「だから何でだよ。今更お前が個人で仕事とれないったって文句言ったりするかよ。個人でダメならSAGINで頑張りゃいいだろ」

蘭「無理だ」

貴文「何で? 何が無理なんだ。頭ごなしに無理だって言われたって納得行くか!」

蘭「っ……俺が! 俺が前の事務所で仕事とれてたのは俺の力じゃねぇっつってんだよ! だからどんだけ頑張ろうが俺にゃマネキンの仕事だって来やしねぇんだ!! その仕事だって、全部……プロデューサーだの社長だのに腰振って情けでもらった汚ねぇ仕事だったんだ」

貴文「……あ?」

蘭「知らなかったのか? 俺、結構前の事務所じゃ有名だったんだぜ枕俳優だっつってさ。まぁ本当の事だけどな! 大企業の社長だっていたし、大物プロデューサーだっていたんだ。男女関係なくな!!」

SE(貴文蘭を壁に押し付ける・酒瓶が倒れて中身がこぼれる)

蘭(痛みに顔をしかめて)
「ってぇ……」

貴文「……お前、今自分が何言ってんのかわかってんのかよ。もっぺん言ってみやがれ!!」

蘭「あぁ何度だって言ってやらぁ! 俺に実力でとった仕事なんざ一件もねぇんだ! 全部、全部……っ」

SE(殴る)

蘭「……ってめ、ゲイノウジンハカオガ命なんだぞ!?」

貴文「うるせぇ! お前がグダグダ意味わかんねぇ事言ってやがるからだろーが!! 枕? 何だよそれ、じゃああれか? お前はプロデューサーだの出資会社の社長とヤって仕事もらってたってそう言うのか!?」

蘭「だからそうだっつってんだろが! 俺だけじゃねぇ、あの事務所にいた奴は殆どそうだ。断ったら仕事干されてそれこそ芸能生活引退に追い込まれる。いいシステムしてやがるぜあの会社はよ」

貴文「トナミや悠太やシーナは? あいつらもやってたっつーのか」

蘭「さぁな、俺の知る限りじゃそれはない。トナミとシーナは神宮のバックのが強いし、悠太は実力がある。やらされるのはバックになんも繋がりもなく芽も出ねぇ様なそんな奴だけだ」

貴文(安堵の溜め息)
「だよな、さすがに自分の息子売ったりしねぇよな」

蘭(クスリと笑って)
「お前あいつらにそんな道徳的な考えがあるって思うのかよ。豊はやらされてたさ、それこそボロボロになるまでな」

貴文「ボロボロって」

蘭「お前が思ってるほどこの業界綺麗じゃねぇつーこった。掘り起こしゃいくらだって粗が出てくる。それが芸能界だ」

貴文(ふと)
「……確かお前って美月の紹介でうちの事務所に入ったんだったよな」

蘭「あ? ああ」 

貴文「(まさか……まさか……)美月もお前とヤってた一人……とか?」

蘭「……あー……」

貴文「どうなんだよ!?」

蘭「そう、だな。まぁ……でもあいつは」

貴文(蘭からばっと離れ、玄関を飛び出す、自由演技)

SE(足音)

蘭「お、おい貴文!?」









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